2018年5月

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 流通している米松合板の厚さについて説明します。

かつてJBLは、1950年代後期から60年代初頭にかけてパラゴン、メトロゴンの設計図を販売していました。

そこに記載のある殆ど合板・パーチクルボード等の厚さは、3/4インチ(19㍉)、1/2インチ(12.7㍉)です。

しかし、制作用に同じ厚さの合板を入手したいのですが、困難になっています。

実際には、殆どこの厚さのものは、販売されていないのです。

厚さが、1ミリも異なれば音質にも影響しますので、入手容易な合板を使用したくないのです。

アメリカの市場で、なぜ希望する厚さ(19㍉)の合板が少ないのか簡単に説明いたします。 

更に複雑なことに、厚さの表示には、2種類あります。

NOMINAL (表記上の、額面の、名目の、名称上のという意味 以下ノミナルと表記する )と 

ACTUAL(実際の、現実のという意味 以下アクチュアルと表記する)の二つです。

 実際に、3/4インチ厚(19㍉)と店頭で表示があっても、23/32インチ(18㍉)であることが殆どです。

初めから23/32インチと表示している場合も多々あります。注意して合板を選ぶ必要があります。

なぜノミナルとアクチュアルの表示があるのかは以下です。

 

1 木材製品ですので、製造したときの厚さから店頭に並べ頃には収縮して薄くなるため、このような表示にしている。つまり製造したときは、19㍉厚でしたが、ユーザーが使用するときは、18㍉厚になっているということです。このようなことは実際に過去にあったと思いますが、乾燥材を使用している現在では、当初から18㍉厚で製造しているはずです。歴史上の慣行が現在も残っていると思います。

 

2 サンド掛けのために薄くなるから、ノミナルとアクチュアルの表示があるという説です。 つまり19㍉厚で製造したが、表裏面にサンド掛けしたために18㍉厚になるということです。

 

3 ほかにも、木材が原料なので、表面に多少の凹凸があり19㍉厚で製造しても1ミリ程度余裕を見て、最低保証値として18㍉で表示しているとの説もあります。

 

合板製造には、100年以上?の長い歴史があり、流通の便宜上ノミナルとアクチュアルの表示が業界で慣行になったようです。

参考までに、収縮のない材料で製造された、MDFやパーチクルボードは、単純明快でアクチュアル表示のみで19㍉厚等のものが

販売されています。

 ところで、日本では、アクチュアル表示のみで一目瞭然ですね。

私が、オーデイオに興味を持った1970年代後期頃には、19㍉厚(アクチュアル)の米松合板が、日本でも流通していた覚えがあります。

しかし現在 では、アメリカでも18㍉厚(アクチュアル)が主流で、19㍉厚(アクチュアル)のものは、殆ど流通していません。

だから、アメリカのビンテージスピーカーを製作する場合は、材料調達で非常に苦労しています。

 

ABサンドとACサンドの厚さ(アクチュアル)が表示されていますが、このうち、3/4、1/2インチの合板の流通は非常に少ないので

ご注意下さい。

スピーカーボックスに使用できるAPA(アメリカンプライウッド協会)の認定した米松合板について述べます。

 一般的に建材用の米松合板は、サンド掛けされていないので、表面が平ではなく、オーディオ用としては不向きです。

サンド掛けされていれば、突板を貼ったり、ペイントできます。また、接着剤の付きも良いです。

米松合板には、必ずAPAのスタンプが押されていますので、スピーカーボックス制作に相応しい米松合板を紹介いたします。

 

マリン プライウッド 

米松合板の最高峰です。 この合板は、表面・裏面・中芯材まですべてBクラス以上の米松(ウエスタンラーチを含む)

で製造されています。

唯一、米松100%なのです。 このマリンプライウッド以外の合板は、中芯材は、他の針葉樹を使用することが許容されています。

しかし、マリンプライウッドは、表裏面・芯材ともにB級以上の米松べニア(薄板)で製造されなければいけないのです。

中芯材の節穴等の大きさは、厳しい基準が課せられています。つまり節穴は殆ど無いのです。

このスタンプは、、表面・裏面ともに仕上げグレードなので、エッジにスタンプが押されています。

表面・裏面ともに A 級のべニアを使用 屋外使用可能な接着剤使用 です。 000は、ここに認定工場の番号が入ります。

PS 1-83は、米国商務省の合板製品規格です。ただし現在は、改編されてPS1-95になっています。

 基本的に、中芯材まで節穴が殆ど無いので、合板がソリッドです。これでスピーカーボックスを製作した場合、

良い響きになるのではないかと思います。今回は、この合板をアメリカより輸入しました。

 

 

 

ABサンド・ACサンド

表面にサンド掛けされたグレードです。これは、建材グレードではなく、家具・造作等に使用する合板です。

中芯材まですべて、米松を使用しなくても良いことになっていますので、米松100%の合板ではないようです。

 割合入手可能で、値段も中庸で使用しやすい合板です。 中芯材の節穴等は、ある程度許容されています。 

上が英語版、下が日本語版です。 今回は、このACサンドも輸入しました。

 

かつて 日本語版のAPAパンフレットがありましたが、現在合板の比率が下がってきたので、このパンフレットは、廃止になった

ようです。

 

 

スタード・アイ・フロアー

これは、床材用の建材グレードですが、表面はサンド掛けされているのでスピーカーボックスに使用可能です。

厚さが最大で28㎜のものがありますので、大きいボックスにも使用可能です。建材グレードといっても品質が劣るというものでは

ありません。表面は、Cプラグド級です。 節穴は、合成樹脂材で埋められてサンド掛けされています。

床用合板ですので、一体性を確保する目的でさねはぎ加工されています。

中芯材まですべて、米松を使用しなくても良いことになっていますので、米松100%の合板ではないようです。

 割合入手可能で、値段も中庸で使用しやすい合板です。 中芯材の節穴等は、ある程度許容されています。 

私は、この合板で、巨体のDD55000 エベレスト レプリカを制作しました。 この厚い板を使い、なるべく振動を抑えた

強固な設計にしました。

 

この28㎜厚米松合板で製作した、DD55000 エベレスト レプリカです。 側板は2枚重ねで56㎜あります。

この箱は、米松材の補強も多く入れているので、重さ約150キロ以上(ユニット含まず)です。

ウーハー用のバッフル板には、無節のセレクトした合板を使用しました。

 

以上 合板の説明でしたが、説明文中に出てきた 米松べニア(薄板)の等級についての説明です。

一般的に言って、A級べニアでも日本人から見れば普通のグレードです。数か所に節穴の補修があります。

全く欠点がないというわけではありません。

やはりアメリカ製ですから、少し大雑把な面がありますのでご留意ください。 むしろ、フィンランド バーチ合板等の方が

丁寧に製造されている感があります。 

  補足として、A級べニアの上にN級という等級もあります。 欠点がごく少ない優秀なグレードですが、市販された合板を見たことが

ありません。

 

 

 

 注文した米松合板は、船に載って順調に航海してアラスカ沖まで来ています。

船のスピードが15海里となっていますから時速27キロということで相当遅いですね。

次の寄港は、釜山港でコンテナを下ろして小さい船に積み替えして、門司港へ運びます。

 前回は、アメリカで生産されている合板の業界団体について簡単に説明しました。

このAPA(アメリカ合板協会)は、当初米松合板(ダグラスファープライウッド)の業界団体でしたが、近年では、環境保護・資源再利

用・技術革新等から多様な合板類を扱う業界団体になっています。

ここでは、スピーカーボックスに使用可能な米松合板にフォーカスします。

今回は、米松合板に使用される樹種です。 実は、通常流通されている米松合板は、100%米松(ダグラスファー)製ではありません。

表面裏面が米松でも芯材まで米松を使用するように製品規格(PS 1-95)は要求していないからです。

つまり殆ど米松合板の芯材が米松をしなくても良い規格で製造されているのです。

APAは、建築・工業用合板に関する米国商務省のPS 1-95の合板規格に準拠して製造されていることの証明で製品にお墨付きのスタンプを押しているのです。

 ただし100%米松製の合板も販売されていますので今回輸入しました。このグレードの合板は、次回以降に説明します。  

樹種ですが、下記の通り強度順に分けています。

この表は、米国商務省の合板製品規格 PS 1-83の樹種区分です。

約70種の樹種を曲げ強度・剛性にに基づき5つのグループ分類しています。

最も強度のある樹種をグループ1として以下2・3・・・と弱い樹種に分類しています。

APA合板のスタンプには、どの区分の樹種なのかグループ番号で表示されています。

 

下記がAPAのスタンプです。 表面A級 裏面C級 屋外用 サンド掛けされた米松合板のスタンプです。

このグレードは、建材用ではなく、家具、造作、工業製品等向けです。通称ACサンドといわれています。

そこに表示されている グループ1が米松とそれに類する樹種を使用した合板であることを示しています。

樹種区分表です。 グループ1から5まで、約70種の樹種を強度等順に区分けしています。

表 まずグループ1の樹種の説明です。(すべてにコメントしていません。)

アピトン・・・南洋材で木製ホーンなどで使用されます。有名なところでは、パイオニア EXCLUSIVE(エクスクルーシブ) model 2402の ボックスにアピトン合板が使用されていました。非常に重く強度があります。しかし、けっして高級な素材ではありません。その対腐朽性から枕木等に使用されています。

バーチ・・・高級スピーカーボックス用で使用されています。バーチ合板は、扱ったことがありませんが、製品のばらつきが少ないようです。密度が高い合板で、製品としては、米松合板よりもグレードが高いと思います。

米松1(ダグラス ファー)・・・あの独特の木目の樹木です。堂々とした樹高80メートルになり、生産量、強度も針葉樹では、ナンバー1の樹木です。

全体的にオレンジ色の赤みがあり、持つと重く確りした印象の樹種です。

木肌は、ヒノキのように緻密ではなくやや粗いです。年輪が明確に出ています。

産地によりばらつきがあり、優秀なものは、非常に重く強度が大です。

乾燥したものは加工性が非常に良く反りなどが少ないです。

ダグラス ファーと呼ばれるのは、1700年代後半にデビッド ダグラスという植物学者が発見したからです。

ファーとは、松ではなくモミ類です。

米松1となっているのは、産地による強度分類によるからです。

米松1は、ワシントン・オレゴン・カルフォルニア等で育成分です。 

 

ウエスタン ラーチ・・・日本でもラーチ(唐松)合板として販売されているのでコメントします。

アメリカでは、米松とこのウエスタンラーチは、同等に扱われています。 

つまり、樹種は違うのですが、外観、強度などが見分けがつかないくらい同じですから同様に扱われているのです。

しかし、圧倒的に米松の産出量が多いのでラーチの比率は少ないはずです。

日本のラーチとアメリカのそれの比較ですが、樹種の違いは遺伝子検査の結果を見たわけではないのでわかりません。

しかし、育成した産地の気候条件で大きく樹木の品質が変わります。

一般的にアメリカの方が、大きいい木を伐採しているとおもいます。 

ウエスタンラーチは、米松の育成地域とは、異なりオレゴン東部・ワシントン東部・アイダホ・モンタナとされています。

 米松よりも小柄な木で樹高60メートルです。

日本で販売されているラーチ合板は、建材グレードですが、価格も手ごろでコスパが高いと思います。

ホームセンターなどで、選定させてもらえば良い木目の合板も入手可能です。

ただしサブロク版で小さくて木取りの効率が悪いことや、希望する厚さが無いことが難点です。

 

サザンパイン・・・これも外せない樹種です。

ロブロイ・ロングリーフ・ショートリーフ・スラッシュの各パイン(松)材の総称です。

これは、アメリカの南部の樹種で、黄色いので、サザンイエローパインとも表現されます。

これも米松と並ぶ優秀な樹種です。全体的に黄色く、木目が明確で、重く強度があります。

アメリカ西海岸では、米松材は主流なので殆ど流通していません。

当方の地元に城島遊園地にジュピターという木製ジェットコースターがあります。

それがこのサザンイエローパインで作られています。

完成して30年くらいになりますが、現在も稼働しています。

乗ったことがありますが、カタカタと音が出てスリルがあります。

薬品加圧注入していると思いますが強度がある樹種です。 

なぜ名称がジュピターなのかですが、英語訳は、木星ですね。お分かりだと思いますが、素材は、木製です。  

グループ2以下は、省略いたします。

ただし、グループ2の米松2は、ユタ・ネバダ・コロラド・アリゾナで育成した米松が該当します。

この産地の米松は強度が劣るということになります。  

スピーカーの話題ではありませんが、我々貿易業者は、購入した商品の所在を常に把握しています。

宅配便の荷物追跡よりも精度が高いです。

例えば、船便でアメリカから日本に輸入する場合、コンテナを載せる船が決まると 1分毎にGPSで船の位置を表示するネットサービスがあるためです。

現在、その本船(コンテナを載せる船)が、シアトルのハーバー島(セーフコフィ-ルドの対岸辺り)の岸壁に停泊して コンテナを積み込みしているのです。

このネットサービスは、素晴らしいことに、これまでの本船の軌跡、これからの予定寄港地、本船の大きさ、現在の運行スピード、喫水線の深さ等情報が満載です。

リアルタイムの動画はないのですが、例えば喫水線が浮かんだり沈んだりしていれば積込中がわかるのです。

この本船は、長さ366メートル 幅48メートル 14万トンで巨大船ですが、現在この程度のクラスの船は、珍しくありません。

アメリカ海軍の原子力空母よりも大きいのですが、長さ400メートルを超える巨大コンテナ船も運送効率から運行しています。

おそらく本船は、アラスカ沖~アリューシャン列島~東北沖~神戸港~門司港の経路で運行されると思います。

しばらく注視します。

 

この本船は、巨大です。コンテナは、1個当たり長さが12メートルです。まるでお茶碗に山盛りのごはんという感じですね。

シアトルのコンテナ埠頭です。私は、1月のアメリカ旅行でシアトル訪問予定でしたが、仕入業務遅延のためシアトルタコマ国際空港以北には行けず残念でした。

 私がオーデイオを始めた40年以上前から欲しいと思っていた米松合板が来月中旬に入荷します。

かつて1950年代のJBLやアルテックのビンテージスピーカーに使用されていました。

しかし現在の流通状況を考えると幻の材料といっても過言ではないように思います。

不思議なことに国内では、米松材は大量に取引されているにもかかわらず、米松合板は、以前から取り扱い業者が殆どありません。

ビンテージスピーカーが好きなマニア様でも実際のところ、米松合板について詳しい方は殆どいないと思います。

アメリカの林業工業製品ですから、ネットで調べても日本側に詳しい資料もありません。

この材料について非常に興味があったのでこれまで長年にわたってアメリカの業界団体から資料を取り寄せて調べました。

膨大な資料があるのですが、スピーカーボックス材料用として選定されるの米松合板のみにフォーカスをあてて説明いたします。

 まず、米松合板は、林業・工業製品ですので、日本のJAS規格に相当するアメリカの業界団体の製品規格で製造されています。

それは、APA エンジニアードウッド協会 と申します。 APAは、アメリカン・プライウッド・アソシエーションの頭文字の省略形です。

アメリカで生産される合板類(合板関連を含む)に必ずJASマークのようにAPAスタンプが押されています。

APA(アメリカのサイトで英語です。)https://www.apawood.org/plywood

APAの簡単な歴史です。  1933年に ワシントン州 タコマで設立しています。 ここは、良質な米松材の最大の産地です。

それまでのダグラスファー合板協会が名前を変えて製品の規格統一と業界の発展のため設立された歴史ある非営利業界団体です。

もともと米松合板の業界団体でしたが、ここ30年で業界の環境が大きく変わり、合板の生産は減少し、OSB(オリエント ストランド 

ボード アスペン等の木片の向きを統一してを接着剤で固めた板物)が主役になってきています。

将来的にさらに合板の製造は少なくなり、何十年後には市場から姿を消すと思います。

 

 1950年代に製造されたスピーカーボックスにAPAのスタンプを見たことはありません。 

JBLやアルテックが、合板メーカーと直接取引したのでAPAスタンプが無いのかもしれません。 

ただし、合板の表裏がハイグレード(AまたB級)である場合は、スタンプは表面に押さず木口に押すために目立たなくなります。

スピーカーボックスでは、節穴や欠点のある建材グレードを使用せず、高級なグレードの合板が使用されていたはずです。

見かけを重視する場合、表面にそれを損ねるスタンプなど押さないのです。

逆を言えば、グレードの低い合板には、外観を考慮しないので表面に堂々とAPAスタンプが押してあるのです。

 

 次回は、スピーカーボックスに使用可能な米松合板の樹種や種類についてです。

 

APAに認可を受けて生産された合板には、各工場でこのスタンプが押されています。

11人載っても大丈夫な米松合板ということでしょうか

4月下旬に、通算9台目となるパラゴンレプリカを無事納品して少し休んでいました。

本日、アメリカの運送会社の倉庫から、米松合板等のパラゴンレプリカ用の材料が出荷されたと連絡が入りました。

今月28日に門司港に到着して、通関など経て実際に手元に届くのは、6月上旬だと思います。

今度、使用する米松合板については、後日詳しくレポートいたします。

新材料が入荷するので、少しやる気が出てきました。

パラゴンの影も形も全く無い工房で、 まず行うことは、材料の調達です。

米松材をひたすら集めて、手押し鉋や自動鉋で19㎜厚等の板を作っています。

パラゴンの設計図からインチサイズの厚さの素材が指定されているので、独自に製作する必要があるのです。

厚さ同時に、莫大な量の端材が出るので 処分いたします。

 

4月下旬に納品しましたパラゴンレプリカです。 日本家屋ですが、お部屋に良くお似合いだと思います。

各方面から、材料の選定を行っているところです。これらの部材の約30%は、端材として廃棄します。